「左利き」である、ということ

2024年05月01日

「左利き」である、ということ

 

私は幼いころから「ギッ〇ョ(左利きの差別用語)」といわれ、食事のときは左の掌をピシッと叩かれ。

 対面に座った人からは「イズイごだ」(仙台弁で「しっくりこない」「居心地が悪い」)といわれ。

 急に小学生の時は「私の彼は左利き♪」のヒットでクラスの人気者になり何かと特別視されてきました。

 統計的には、世界人口のうち10%前後が左利きとされているので、皆様の中にも左利きの方がいらっしゃるだろう。

 8月13日は世界的な「左利きの日」である。<右利き用だけではない、誰もが安全に使える道具>について各種メーカーに対して呼びかけることを目的に提唱・制定されたものだ。

 改札・ハサミ・缶切り・スープ用のおたま・PC用マウス・ギターなどの楽器・電源ボタンの配置・・・右利きの人が意識する機会は少ないが、世の中の多くのものはマジョリティである右利きに合わせて作られている。

 近頃は様々な左利きグッズが販売されてはいるが、それも「ありふれたもの」ではなく特別仕様に近いものであり、左利きの人々にとっては依然として「何かが少しずつ不便な世の中」であることには違い無い。

 

平等(Equality)と公平(Equity)

「何かが少しずつ不便」という状況は、作業効率にも少なからず影響が及ぶ。

 例えば、右利きのAさん・Bさん・左利きのCさんに対して何らかの作業のために同じハサミが配られたとする。

 形だけを見れば、全員が物理的・機会的には平等にハサミを与えられたことになるが、それが右利き用のハサミのみであった場合、左利きであるCさんは「ちょっとした不便」の中で作業することとなる。

 些細なことのように思われるかもしれないが仮に、この作業が業務上の評価に繋がるものだったらどうだろうか。

 Cさんからしたら「自分一人だけ作業しづらくて不公平」ということになるだろう。

 

個人の違いは視野に入れず、すべての人に同じものを与えることを【平等Equality)】、

個人の違いを視野に入れて、目的を達成するために適切なものをそれぞれ与えることを【公平(Equity)】とする考え方がある。

 前述の例であれば、全員に同じハサミを与えるという対応は【平等(Equality)】であり、

Cさんには左利き用のハサミが与えられた場合は、目的達成のために適切なものをそれぞれに与える【公平(Equity)】に該当する。

 

公平の考え方を取り入れて

この頃、SDGs(持続可能な開発目標)17の目標の中にも、この【公平(Equity)】の考え方を取り入れ構造的不平等を改善するために

公平性の担保までを目指す取り組みが推進されている。

 この取り組みは世界的な潮流となってきていることから、平等と公平を考えるきっかけとして、

下のような構図のイラストを目にされたこともあるかもしれない。

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イラストが示すとおり、平等(Equality)と公平(Equity)の違いを考えるにあたって重要なことは、

「目標達成の手段」が平等か否かではなく「機会や難易度、負荷」などが、目的を考慮した上で

相対的に公平かどうかということを重要視しているという点である。

現実世界ではこのイラストのように視覚的にわかりやすい場面ばかりではないが、

公平(Equity)の考え方に基づいて導入されている制度は数多く存在する。

 

 所得税や相続税などの累進課税はもちろん、仕事と育児や介護などとの両立のためのフレキシブルなワーキングプログラムや

職位や業務内容に関わらず通勤距離に応じた交通費の支給をしている企業も多いだろう。

 ギャラリー杜の音を運営する株式会社デザイン工房においても、

社員に向けたサポートや有給休暇・介護に特化した研修、

障がい者の採用や採用後の研修など、

それぞれの環境や状況に応じた施策やサポートを行い公平性の担保・機会の平等化の実現を図っている。

 

「違い」を「強み」にしていくために

冒頭で左利きの日に触れたが、スポーツの世界では左利きが「サウスポー・レフティ」として重宝される場面も多く、

時として試合の流れや勝敗すらも左右する戦略の一端となることもあり、

個々の「違い」あるいは「マイノリティならではの特性」が強みになっているともいえる。

 それと同様に、ジェンダーやセクシャリティ、生活・文化・言語の違い、障がいの有無など、

ともすれば「マイノリティ」として社会や制度の中で置いて行かれてしまいがちな個々のあらゆる違いも、

組織における強みにできるような社会こそが「更なるインクルーシブ(「仲間はずれにしない」「みんないっしょに」という意味です。)な環境」であると考えるべきだろう。

 人間は、基本的に百人百様である。一人ひとりの違いに合わせたサポートを完全な形で提供することが非常に難しいのは事実だが、

それは公平性を軽視すべき理由にはなりません。

 むしろ、公平性はその完全な実現が極めて困難であるからこそ、そこに一歩でも近づくためのたゆまぬ努力を続けていく必要があると言えます。

福祉業界にいる、私たち一人ひとりもより良い形で公平性を実現できる環境づくりに向けて

多くの方々と対話を重ねながら運営を進めていかなければならないと考えます。

 

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

   厚労省 暮らしの中から考える

文責:千葉 政美