事実行為と法律行為
2024年05月01日
事実行為と法律行為 (士業の方に物申す)
例えばレストランに行った場合、食べることは事実行為、メニューを見て注文し、
お金を払うのは法律行為。
お店側からすれば、料理を作ることは事実行為、
注文を受けお金をもらうのは法律行為。
事実行為と法律行為を意識する機会は少ないと思うが、何を支援するかを考えると、どの行為を支援するかということになり、上記の区別が必要になってくる。
高齢者向けを考えた場合、介護や医療そのものは事実行為、介護や医療(事実行為)に関する契約や支払いは法律行為ということになる。
法律行為とは・・・
成年後見人等は「法律行為」を行うのであって「事実行為」は行わないというのが法律の考え方です。
「法律行為」というのは、法律的効果を生じる行為で、入院や入所契約の締結、売買契約などのことです。
したがって、本人への面会や適切な施設を探すこと・住まいの点検(どんな生活をしているか)などといった行為は、「法律行為」ではなく「事実行為」ですので、「やらなくてよい」ということになります。
問題は・・・
我々は様々な法律行為を行って生活をしています。
しかし、その法律行為を行うためには、様々な事実行為を経過しなければなりません。
たとえば、車を購入するのに、どんな車がいいか、どういう性能なのかといった、その車に関する情報収集等をするのは当然のことと思います。しかし、それは事実行為です。
これらの行為を行わないとすると車を購入することは難しいでしょうね。成年後見制度についても同じだと思います。
本人にとって適切な施設の入所契約などの法律行為が、自ら成年後見人等の前に現れてくれるわけがありません。
だとすると、誰が施設を探してくれて、誰がその施設の情報を収集して、本人に適しているかを判断していくのでしょう。
こんな疑問が生じます。
病院や施設を変わらなくてはならなくなった場合、それらの病院や施設を探すのは他者に全てを任せるという者がいます。法律上、それはそれでいいのでしょうが、病院や施設を見てもいない者が契約のときのみ「成年後見人等の仕事だから」ということで出て行くということでいいのかという疑問は生じます。
つまり、本人にとって適切な病院なのか、あるいは、施設なのかということを誰が判断するのかということです。また、施設に入所している者の健康診断や病気の受診についても、付き添いはしないという者がいます。これらの付き添いも事実行為となるわけですから、それはそれでいいでしょう。しかし、受診を受けるための契約や受診結果を担当医師から聞くのは誰なのでしょうか。
親族の方々へ。
第三者の成年後見人等を探す場合には、以下の点に注意してもらいたいと思います。
申立てをする際には、
1,何をしてくれるのか確認してください。
親族の方が成年後見人等に就いているのであれば、「法律行為」も「事実行為」もなく親族としての義務を果たすだけでしょうから深く考える必要がありませんが、問題は何らかの事情によって第三者を成年後見人等にしなければならない場合です。
たとえば、高齢となってしまった親が、障害を持った子の将来のために成年後見人等を選任する場合や、遠隔にいる親のために成年後見制度の利用を考えている場合には、成年後見人等が何をしてくれるのかを確認する必要があります。
2,必要な事をやってくれる専門家をお探しください。
これまで本人のためにやってきた事の全てを成年後見人等に期待することは無理です。というより、ほとんど出来ないでしょう。何故なら、「事実行為」は職務ではないからです。たとえば、本人の病状は担当医から聴取するだけで、実際に本人と面会するということは「事実行為」ですので、「やらない」という専門家が多くいます。
おそらく、皆さんは、定期的な面会は基本だと思っているでしょう。
また、病状あるいは状況によって適切な病院や施設を探してくれると考えているかもしれません。
しかし、全ての成年後見人等が面会をするわけではありませんし、まして病院探しや施設探しなどしないのではないでしょうか。
3,面会等を定期的に行ってもらいたいなら・・・
社会福祉士さんなどの福祉の専門家の皆さんは、面会は成年後見人等の基本的な職務として位置付けているようです。
成年後見人等は、「法律行為」を行うということですが、「事実行為」をしてはいけないということではありません。
「事実行為は行わない」という専門家をいつまでも相手にしていても仕方ありませんので、「やってくれる」という専門家を探すことだと思います。
それには、福祉の専門家のところに相談するのが一番かと思われます。
「身上監護」という部分においては、福祉の専門家が適任です。
ただし、本人に財産が多くある場合や、遺産の分割などの事務がある場合には、法律の専門家が選任されることになるかと思われます。
その場合には、「財産管理」を法律の専門家に、「身上監護」を福祉の専門家に頼むという方法も考えられます(複数後見)。
文責 千葉 政美