人生計画の自己選択
2024年05月01日
人生計画の自己選択
時代背景:健康寿命
平均寿命は、その年に生まれた子供が平均で何歳まで生きるかを予測した数値を表します。
終戦直後の1947年では男女とも50歳代であったが、2021年の統計では男性81.641歳、女性87.74 歳となりました。
2000年に、WHO(世界保健機関)がQOL(Quality of Life 生活の質)を重視する考え方から、
健康で支障なく日常の生活を送ることができる「健康寿命」の概念を公表し、
日本では2000年4月から介護認定制度がスタートし、
自力での「歩行・入浴・排泄」が困難な要介護者の実態把握ができるようになりました。
厚生労働省は、2010年(平成22年)に平均健康寿命は男性が72.6歳、女性が75.5歳である具体的な推計値を初めて公表しました。
健康寿命は、病気の有無に関わらず介護を受けない「自立自尊」の生活ができることを意味しています。
(下図は国民生活基本調査平成22年調査 平均健康寿命は男性が70.42歳、女性が73.62歳 と若干数値に差異があります。)
65歳からの人生計画の自己選択:最終選択は「死に方」QOD(Quality of Death 死の質)
老後の生活設計を65歳から予め考えながら今を生きる姿勢が求められます。
持ち家の人は家族同居か独居生活の選択が必要です。
家族に迷惑をかけたくないと思う人はサービス付高齢者住宅(サ高住)か、
若い時に頑張ったひとは住宅型有料老人ホームを選択するかもしれません。 何れも、自立生活が基本となります。
何らかの介護が必要になる時、在宅介護か施設介護かを選択しなければなりません。
施設介護には、特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)があります。最終的には男性9.13年、女性12.68年の介護期間を経て、
死に至ることになります。
また、在宅介護のまま在宅死を迎えるとは限らず、死の直前に救急病院に救急搬送され病院死となる場合もあります。
2016年の統計では、病院死が75%、在宅死が9%、施設死が13%です。
昔は在宅死が当たり前でありましたが、近年は病院死、施設死が多くなり、在宅死は恵まれた環境がある人だけの死に方になってきています。
長寿の道は、「自立自尊」
長寿であるためには、まず、好きな時に自由に行動できる身体的活動力を維持してなければなりません。その健康づくりの基本は、正しい姿勢で歩くことです。
背筋を伸ばし、膝を伸ばして、踵から地に着けるウォーキング法は、高齢者に多く見られる腰椎障害・膝関節障害の予防になり、全身の筋肉を鍛える有酸素運動として最適です。
元来、日本は「座る文化」と言われるのに対して、ドイツの高齢者のように「死ぬまで歩きつづける」という執念、「歩きながら考える」哲学の道など、ヨーロッパでは「歩く文化」が基本になっています。
当然、寝たきり老人はいないことになり、「自立」とは自らの力で地面に2本足で立つことと考えているようです。
尊厳のある死に方は、自尊心のある生き方であり、よく生きることがよく死ぬことです。
健康づくりは単に病気にならない予防策ではなく、死ぬ直前まで立ち上がり、好きな時にどこでも自由に行ける筋肉づくりだと思います。これが自立自尊であり、「自立自尊死」です。
自然界においては、立ち上がれないことは死を意味します。
人間は生まれてから立ち上がれるまで親の助けが必要です。
2本足で立つには多くの姿勢維持筋肉群の協調運動を日常的に訓練する必要があります。
いかなる病気になっても立ち上がる努力を怠ってはならなく、例え要介護者になっても本人に立ち上がる執念がなければ、介護は死に向かう道であり、生に向かう道にはならなくなります。
与えられた命の最後の一片まで使い切った時、立って死ぬことができる筋肉を温存しなければならない。
これこそが究極の死に方「自立自尊死」ということです。
寝たきりの原因疾患
要介護の原因疾患の内訳 厚生労働省 国民生活基礎調査(2016)
さて、生活を損なう原因となる病気は何でしょうか?
死亡率の最大の原因の病気であるガンでしょうか? そうではありません。
太平洋戦争後、結核に代わって半世紀以上、ずっと脳卒中(脳血管障害)が、寝たきりの原因の第一位でした。
2016年、国民生活調査で「認知症」が一番の原因になり、当面これが変わることはなさそうです。
一方、一見別々に見える高齢による衰弱・関節疾患・転倒骨折は、筋骨格系の移動能力の低下が共通因子で、ストレスに弱い「フレイル」という括りでまとめられます。
この合計は要介護の原因の1/3以上をしめます。
私事ですが、ピンピンコロリの人生が理想だと事あるごとに話している両親が、未だに1階の寝室ではなく2階の妹がいた部屋から1階の食堂へ、
階段の手すりを抱きかかえる様に降りてくる執念に、危ないとか言う気にはなれず、ただただ脱帽の毎朝です。
文責:千葉政美